概要
初出
『ビッグコミックオリジナル』1975年7月20日号
作中日時
1945年8月
関連場所
不明。ラバウル基地?
登場人物
山上(整備兵)
山中(整備兵)
山下(整備兵)
ジョーク1(P-61パイロット)
ジョーク2(P-61パイロット)
登場兵器
B-25
P-61
月光夜戦
いすゞTX-40燃料補給車
零式輸送機
零式艦上戦闘機
あらすじ
連日B-25の爆撃を受ける帝国海軍基地。
月光夜戦が迎撃を行うが、返り討ちにあう。
米軍爆撃部隊には、2機のP-61「黒衣の未亡人」が援護として随行していた。機上のレーダーで帝国海軍の迎撃を察知し、爆撃機編隊の各機を無線で管制。自機の強力な武装も使って、暗闇の中、迎撃機を逆に撃墜していく。
基地で無聊をかこつ3人の整備兵。突然に司令に呼ばれ高級将校の軍服を着せられ、慰問団の美女と共に零式輸送機に乗せられて空中へと送り出される。
米軍は偵察員により離陸の状況を確認し、これを軍高級将校の前線視察と判断。P-61を待ち伏せミッションに送り出す。
案の定、暗闇の中でP-61と遭遇する。零式輸送機は被弾しながらもRATOまで使用して夜明けまで空中を逃げ回る。
夢中になって輸送機を追い回すP-61だったが、気が付くと夜が明けており、後方には多数の零戦が。
P-61の一機は撃墜され、もう一機は帝国海軍に鹵獲されたのだった。
登場機材
月光
小園司令に生み出され、小園司令と共にラバウルで戦った機体。
ここで出撃した3機はB-25迎撃任務ですのでおそらく斜め銃装備だったと思いますが、レーダー完備のP-61相手ではどうしようもなかったでしょう。
B-25
B-25ミッチェル。USAFにB公は数あれど、もっとも大量に生産された爆撃機。
B-29なんかの戦略爆撃機じゃなくて、通常の戦術爆撃機なので使い勝手もよかったと思いますが、損失数も多かったのでしょうね。
扉絵にもでかでか出てきますが、.50 Calを機首前面に4丁、側面に4丁とか、てっぺんに2丁とか超極悪。.50 Calは「丁」じゃなくて「門」でかぞえるべき。

トルメキアコルベットのイメージソース。 前向きに何門ついてるんですか.50キャル
とにかく.50 Cal番長。対地ぜったいに殺すマン。
P-61
コードネーム・黒衣の未亡人。
ブラックウィドウと言えば、のちに試作機なのに人気が高いYF-23が「ブラックウィドウII」を名乗っているを思い出します。
和名で言えばクロゴケグモ。黒後家蜘蛛。いやーん。
毒蜘蛛らしいですが、なんとなく「ウィドウメーカー」的な響きがあって、Pさんたちには「ウィドウ」なんて名前、嫌われたんじゃないかと推測します。
私はこの機体、このお話で初めて知りました。双胴双発と言えば普通はP-38じゃないですか。
何がかっこいいかって言って、機体上部の.50 Cal 4連装銃塔ですよ。機体下部にもっと強力な20ミリ4門もついてるけど、やっぱり4連装銃塔のインパクトには敵わなくて、作中でも上部機銃塔ばかりつかってますね。
零士的にも宮さん的にも、こういう複数銃口をフラットに並べるの大好物じゃないですか。一番はB-25の機首かもしれませんが(白色彗星帝国の3連装砲塔戦車とか、トルメキアのコルベットとか)。
P-38よりでかい機体、というのが当時の印象でした。軽爆くらいあるのかな。
それにしもてこれだけP-38くりそつな機体、ケリー・ジョンソンは怒らなかったのかな。
タイトルの「妖機」ってのはないとおもう。なんか呪いパワーとか出しそう。
いすゞTX-40燃料補給車
え?こんな特定のできる車両、出てきましたか。
出てきてたんですよ。
刮目してみよ!
零式輸送機
DC-3をコピーした奴。尾翼の形とか、やっぱり日本機とは雰囲気がちがう。
ダグラスからちゃんとライセンスを取って製造していたので、パクリではないです。でもエンジンは金星に換装。
海軍は零式輸送機、陸軍は100式輸送機(機体は全然別のもの)。「零式」と「100式」の陸海での使い方違いがよくわかりますね。
しかし、RATO付くんですか?
mjd?
零式艦上戦闘機
ゼロ。
ここではわき役というか、最後に大勢で出てきて、P-61をいじめる役。
ちょっと待って!
もしかして零戦って戦場まんがシリーズではこの話が初出なの!?
気が付かなかった。タグに機材名入れてて、初めて気が付きました!
初登場、おめでとう。
何気に陸軍機優遇なんですか戦場まんが。
いろいろ
どこですか
ラバウルに決まってます。
なんといっても月光がいる。零戦もいっぱいいる。
いつでしょう
最後に「戦争終わりだってよ」てセリフがありますから、終戦間際なんでしょう。
もしかしてこのセリフ「こんなことやってるとは、世も末だよ」って意味の冗談なのかもしれませんが。
終戦間際っていっても、その割には機材が豊富でスコップ飯食ってるんだよなあ。元気な零戦もいっぱいいるし、月光もいるし、全然戦争末期感がない。
その辺は気分でw
スコップ飯
ドッパ。
はっぱのお皿にスコップ飯。メザシとタクワン付き。
なんでこんなに食料豊富なんだろう。
そういや最近タクワンをおかずにご飯を食べることもなくなりました。
US NAVY AIRFORCE
ネイビーなのかエアフォースなのか。大問題ですが、元々米軍の航空基地を帝国海軍が占領して使っているってことですね。
ラバウル基地ってもともとはどこの国の基地だったんだろう。東飛行場と西飛行場は日本軍の占領前から存在してたと聞いたことがありますが、豪軍だったのか米軍だったのかはちょっと知らない。
敵の基地かっぱらうというと、逆パターンですが、日本軍が営々と作って未完成だった基地を米軍が占領して、機械力であっという間に完成させてしまったガダルカナルのヘンダーソン基地を思い出しますね。
奴らの言う夜間戦闘機「月光」だ。コードネーム…
はい、コードネームは「アービング」です。
P-61乗りが「奴らの言う」ととわざわざ注釈付けていうところがいやらしいですね。
俺らこそが真の夜間戦闘機だっていう自負を感じさせます。
奴らもレーダーを持っているが、性能的に問題にならん
このへん、よく出てくるモチーフですのでちょっと深堀り
この頃の日本製品、たぶんちゃんと作った試作品はそれなりに動作するんじゃないかと思うんですよ。でも製品用の部品がだめだったり、量産技術がなくて手作りで歩留まりが悪かったり、燃料やオイルとかプラグといった消耗品の品質が悪かったりとかで性能が上がらないというつらみが零士の、そしてその作品で育ったクリエイターの中で
「いい部品だけ集めたから、ごっつええ調子でっせ!」
という試作機、エース専用特別機信仰につながったのじゃないかと思ったりします。
しかし、史実的に言っても「エースに特別機」と言えば、陸軍審査部飛行隊(一部、実戦にも出てる)とか、ルーデルのカノンフォーゲルとか実際にあるし、やっぱ燃え燃えですよねw
黒江少佐が「俺はフォッケで出る!」なんて叫んだら鼻血ブーですよ。
撃墜する!
凶悪。
おーい、そこの三人
3人のモブ整備員を呼びに来るのは、タンクを背負った燃料車。

おーい、そこの三人
ポンコツの山
中攻が多いみたいだけど、戦闘機もいる。機種を特定しようかと思ったけど断念しました。
ららら
デロリとした二枚目
スーザン・ヘイワードよりきれいだ。
そのグラマーは商売敵
あれですよ、海軍甲事件。
同じ双胴双発でP-38と似てるし、ここはやるっきゃない要人の待ち伏せ空戦。
しかし、最後の”HELP!”といい、ここにでてくるP-61乗りたち、どこか間が抜けていておっちょこちょいで憎めないなあw
RATO
零式輸送機がP-61の照準から離脱するために緊急出力としてロケットアシストを使用します。
ロケットアシスト離陸補助装置。通称RATO。広義には「JATO」といういい方もあるそうです。ロケットでもJATOって呼ぶんだって。
私は昔からロケットアシストはRATO、ジェットアシストはJATOと呼ぶ派です。

ブルーエンジェルス支援機のハーク
輸送機のRATOというと、ブルーエンジェルスの支援輸送機・C-130のRATO離陸デモとか有名ですよね。あの辺からの発想なのかな。
零式輸送機は見つかりませんでしたが、DC-3のRATO利用例はありましたよ。
DC-3のRATO
RATOはそもそもはルフトヴァッフェがMe321「ギガント」(宮さんのアレとは別w)にロケットをくっつけたのが出自らしいですから、輸送機につけるのは正しいのかもですね。

Me321ギガントのRATO
ロケットか、ジェットかというのはありますが、いずれも離陸支援の補助推力なので、作中の様に、飛行中の加速用に使えるのかどうかはよくわかりません。

ハンガーからゼロ距離離陸で飛び出すミッキー
ずっと海軍機ばかり使っていたミッキーがしょっぱなからA-4じゃなくてF-100に乗ってでてくるのはものすごく違和感があったんですが、ようは新谷師匠がいつかRATOでのZELLを描きたかったという事情なんじゃなかったか。いっかいF-14に乗ったのをむりやりF-100に戻してますしw
やっぱこの手のおたくコンテンツ、元ネタっていうか、探せばどこかにインスピレーションのもとがあるものなのよね。
まとめ
前回の「晴天365日」と同じく、深刻さをまったく感じさせないお話w
なにしろ登場人物が山上、山中、山下ですよ。やるきあんの、零士?
おとりにされて命を的に夜明けまでひきずりまわされても「この女丸見えだぞー」「指いれないでー」ですましちゃう。
終われば立ちどころに元の整備兵。
そのへん評価に困るわけですよ。
たんにP-61がカッコよかったからそれを描きたかっただけって気がする。しかもなんとなくですが、この作品、新谷臭を強く感じるんですね。なんとなくB-25の作画は新谷っぽい気がする。零士作画にしては少し硬質というか、ペン先が固い気がするんですよね。もしかするとP-61のプラモ作った新谷師匠が、「先生、これ描きましょーよー」ってだだこねて、零士もしたかなくヤマもオチもないネームを切ったのかもしれない。や、そういやP-61のプラモって、ハセもタミヤもないみたいだな。レベルだけ?
最後に一機とっつかまえてきちゃうところとか、神栗ぽいじゃないですか。RATOでぶっ飛ばす話も、ミッキーのF-100を思い出したりする。このなんとなくちりばめられる新谷感。どうなんでしょうw
しかし、あの燃料車が実在の車両だったのは知らなかったなあ。真面目に読んでみてよかった。
次回は毛色が180度変わって、戦場まんが王道の「戦場の悲哀」がテーマなうえに、二式単戦語れまくりの「成層圏戦闘機」だー!
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