成層圏戦闘機

二式単座戦闘機「鍾馗」 帝国陸軍

概要

初出

『週刊少年サンデー』1973年34号

作中日時

1945年3月

関連場所

成増基地および東京上空

登場人物

佐渡中尉
片山軍曹
佐渡(弟)

登場兵器

二式単座戦闘機「鍾馗」二型丙 、二型乙
B-29
P-51D
二式複座戦闘機「屠龍」
五式15センチ高射砲
F6F
P-47N

あらすじ

帝都上空、暗闇の中上昇を続ける二機の二式単座戦闘機「鍾馗」。飛行第47戦隊の佐渡中尉機と片山軍曹機の2機である。

B-29の80機編隊を確認して、二機は迎撃を開始する。

まず上方の防御砲火の死角から急降下で一撃かけるが、B-29の持つ強力な防弾能力に阻まれる。

一撃後、護衛戦闘機の攻撃を受け、レーダーでの夜間戦闘管制を行っている機体がいると直感した佐渡中尉は、上方高度1万メートルに陣取る「ミスエノラ」に目をつける。性能の不利は承知で接敵を開始する2機。だが攻撃にかかろうとした瞬間、後方からP-51の射撃を受け墜落する佐渡中尉機。佐渡中尉の機体はまっさかさまに民家の中央に墜落してしまう。

その後もB-29編隊は焼夷弾爆撃を続け、東京を焼き払い、多くの市民を死に向かわせる。

翌日、片山軍曹が若いパイロットを伴って佐渡中尉の墜死現場に現れる。若いパイロットは佐渡中尉の弟である。

二人に向かって「ここで俺の家族が死んでいる。敵の爆弾どころか味方の飛行機に殺されるようなことがなぜ起きた」と食って掛かる男性。片山軍曹は墜落現場で佐渡中尉の飛行眼鏡を発見し、佐渡へ渡す。

嘆き続ける男性に「すみません。ここに落ちたのはあいつのにいさんなんです…」とていねいに頭を下げる片山軍曹。男性も黙るしかなかった。

続いてB-29の墜落現場に向かう二人。そこで若い米軍搭乗員の死体を発見する。「落ちる時、あいつも恐ろしかったろうなぁ」と共感する佐渡。

翌11日。「南無八幡大菩薩」「誠」の幟がはためく成増飛行場の飛行第47戦隊。多くの二式単戦が待機している。

佐渡は片山軍曹に「それまで飛行第4戦隊にいて、新しい機体を受領しに来たら、そのまま47戦隊へ配属された」と語る。飛行第47戦隊は「新選組」を名乗る首都防空を任務とする二式単戦を装備した精鋭部隊である。他の機体は12.7ミリ4丁装備だが、佐渡の機体のみ主翼内に40ミリ砲2門を装備している。

兄の撃墜を指揮したB-29を空中で発見したら、なんとしてでも敵を取ると語る佐渡に、片山は「にいさんも君に死ねとは言うまい。無理はするな」と助言する。

その日もB-29は空襲に現れる。出撃する片山軍曹と佐渡。

高度1万2千メートルまで上昇し、上空から一撃をかける。片山軍曹機の12.7ミリが命中しても撃墜できなかったが、佐渡機の40ミリ砲は4発の命中でB-29をばらばらにする。

その時、上空にミスエノラの黒帯の機体を発見する。「そいつだ」と佐渡に教えた片山軍曹だったが、その瞬間後方から護衛戦闘機に撃たれ戦死する。

ミスエノラを目指し上昇を続ける佐渡。途中でP-47の編隊を発見し、機体のシルエットが似ていることを利して、編隊にまぎれこむ。

P-47が気が付いた瞬間、ミスエノラへ突撃を開始する佐渡。40ミリ機関砲は使用せず、後ろ上方から体当たりを敢行する。回転するプロペラでミスエノラの機体を切り刻む佐渡。胴体を破壊しながら、二式単戦はB-29の機上に機体を食い込ませて停止する。片側の水平尾翼を切り落とされ、次第に進路を失っていくミスエノラ。

「ぼくは家の上へ落ちないよ」とつぶやく佐渡。海上を月あかりに照らされながらゆっくりと降下していくミスエノラ。その後この二機を見た者はいない。

昭和20年8月14日。終戦の前日の東京上空。一機の二式単戦が帝都上空を守っている。

東京はすでに焼き尽くされて灰になっていたが、その灰を守って二式単戦はなお空中にあった。

登場機材

二式単戦「鍾馗」

海軍の雷電と並んで帝国陸海軍には珍しい重戦。雷電とコンセプトは同じで、爆撃機用の大馬力エンジンを搭載し、速度、上昇力を重視して設計されたインターセプタ―。

雷電は一式陸攻用の火星、二式単戦は呑龍用のハ115を使用してます。コンセプトは同じでも小型戦闘機に爆撃機用の大口径エンジンを搭載するアプローチは違っていて、雷電はなるべく機体中央に太いエンジンを持ってきて、前方をすぼめ、おかげで伸びたエンジンとプロペラまでの距離を延長軸でつなぐ手法。二式単戦は普通通り機首に搭載して、エンジン後方を絞って整形する形。機体デザインは正反対なんですね。
雷電は空力と重量バランスはいいけど延長軸関連のトラブルが多そうだし前方視界は悪い。二式単戦は視界はすこしいいかもしれないけど、空力抵抗が少し多そう。一長一短だと思います。

新撰組の二式単戦はどれもII型と思いますが、II型にも甲乙丙の三機種があります。

I型乙II型甲II型乙II型丙
発動機ハ41(離昇1,250馬力)ハ109(離昇1,450馬力)ハ109(離昇1,450馬力)ハ109(離昇1,450馬力)
最高速度605km/h(高度5,200m)605km/h(高度5,200m)615km(高度5,200m)615km(高度5,200m)
最大上昇限度5,000mまで4分15秒5,000mまで4分15秒5,000mまで4分26秒5,000mまで4分26秒
武装胴体 7.7mm機銃2挺
翼内 ホ103 12.7mm機関砲2門
胴体 7.7mm機銃2挺
翼内 ホ103 12.7mm機関砲2門
胴体 ホ103 12.7mm機関砲2門
翼内 ホ301 40mm自動噴進砲
胴体 ホ103 12.7mm機関砲2門
翼内ホ103 12.7mm機関砲2門

作中で、型の話題が出てきますが、よく見ると記述が間違っていますので注意。
佐渡中尉と片山軍曹機は12.7ミリ4丁装備のII型丙、佐渡機は40ミリ砲装備ですからII型乙と考えます。

作画なんですが、やっぱり二式単戦、難しいんだと思いますよ。飛行機を描かせればどんなものでも上手に描く零士ですが、後方斜め上方からのカットとか、斜め前方からのカットは私には機首から胴体への流れが若干ふとましく、なんとなく雷電ぽく見えます。機首からの絞り方を描くのが特に難しいんだと思います。

逆に佐渡がミスエノラに突撃する真後ろ上方からのカットは胴体の絞り方は見事で、これはすごく二式単戦ぽく見えます。あと扉の佐渡中尉機の真横のカットもいい感じですね。

B-29

言わずと知れた未来からやってきた時代の常識を超えたチート爆撃機。

佐渡機に切り裂かれた機体は、与圧が破れて中はすごいことになってるんじゃないかという気がします。

P-51

リトルフレンズ。
たぶんP-51D

足も長くてよく動く。.50 Calの6丁装備。
迎撃機より武装が強力なんてずるい。

二式複戦「屠龍」

え?二式複戦、出てきましたか。出てきましたよ。

迎撃戦の当初に撃墜されるやられ役で出てきてたんですよ。ちゃんと見てくださいよ。

こちらも多分対-29邀撃任務だったと思います。
どこの機体だろう。松戸の飛行53戦隊機かな。

5式15センチ高射砲

久我山の新型15サンチ。
かこいい。しびれる。

戦闘シーンの描写がないのが残念です。

F6F

え、出てた?
出てました。艦載機もいたんですよ。

P-47

とにかくでかい。
たぶんP-47N。

そんなに二式単戦と似てるかなぁ。
P-51編隊に紛れ込む三式戦とか、どこかで見た気がする。

.50 Calの8丁装備。
リトルフレンズより武装が強力なんてもっとずるい。

いろいろ

どこですか

飛行第47戦隊のお話なので、成増飛行場。
作中で描かれる二回の空戦の戦場は、共に東京上空です。

本当の迎撃では、後述するように最初の一撃はもっと西の方で行われたのじゃないかと思いますが、作中では帝都直上の様な感じです。

いつでしょう

佐渡中尉が戦死したのは東京大空襲の日ですから、1945年3月10日です。これは確定。

佐渡がミスエノラを迎撃したのはいつか、ですが、成増基地で片山軍曹と佐渡が話している時「ゆうべ上空にいたのは」と片山軍曹は語っています。その会話を断ち切るように空襲警報が鳴って、最後の佐渡の迎撃戦闘に繋がりますから、これは3月11日と考えるのが自然ですね。

東京大空襲は3月10日、11日ですから、史実にも合致します。

最後の一コマで8月14日の東京上空に滞空する二式単戦が描かれるので、佐渡の戦闘が終戦直前のことだったのかという想定もできますが、前述の事情で、佐渡兄弟の戦闘はどちらも東京大空襲での出来事だったとしておきます。

飛行第47戦隊「新撰組」

飛行第47戦隊の通称は「新撰組」(かわせみ部隊、とも)。
二式単戦の増加試作当時に臨時中隊として発足し、二式単戦と共に生き、終戦まで戦った部隊。

もともと赤穂四十七士にちなんで「独立飛行第47戦隊」と名付けたくせに(部隊ナンバーが先にあったわけじゃなく、なんと忠臣蔵の方がネタ元なのです)、愛称を「新撰組」としちゃうふわっとしたところが日本人らしい。

「維新」とか「新撰組」とか歴史的な意味とまったく関係なく、イメージだけで名乗りたがる政治団体もあるじゃないですか。幕府の指示通りに人を斬りまくった「新撰組」なんて名を名乗る野党政治家って意味わかんないですが、昔から日本人にはそういうイメージだけで名前を付ける雑さがあったよね、という話。ふっ、変わらないのね、日本人。

なにしろ、胴体に山鹿の陣太鼓を描いた新撰組ってなによそれって、思いますなあw

全然関係ないけど、新谷師匠の「ファントム無頼」でも、F-4装備の305thが「新撰組」を名乗って、インテークベーンとか垂尾にダンダラ描いているじゃないですか。あれは首都防空任務にあたった飛行47戦隊にあやかった名前という設定なんですかね。

五稜郭は新撰組最後の地ですから、作中の「五稜郭のモグラ」という符牒に戦闘指揮所の気合の入り具合を感じたりします。

上下も水平もわからない

片山軍曹、バーティゴですそれ。
あぶないよ!

電影照準器の調子はどうだ

Revi C12D!
じゃなくて一〇〇式射撃照準器。

こんな感じだったそうです。
かこいい!クルマのダッシュボードに付けたい!

一〇〇式射撃照準器

一〇〇式射爆照準器

そういやあ、一式戦の照準器は望遠鏡式の眼鏡式じゃないですか。
わたし、イメージ的にはなんとなく二式単戦も眼鏡式照準器のイメージだったんですよ。

キ44試作/増加試作機独立飛行隊第47中隊 試作5号機 

キ44試作/増加試作機独立飛行隊第47中隊 試作5号機 中隊長 坂川敏雄少佐乗機

四式戦の成功もあって、陸軍内では二式単戦は冷や飯食わされていたらしく、装備の改変とかもスローリーでながらく照準眼鏡装備の機体も残っていた由。

そういうので何となく二式単戦の照準眼鏡イメージがあったのかなあ。

Pによっては「台座ががっちりする照準眼鏡の方がよく当たった」っていう人もいますし、好みもあったのかもしれませんね。

照準眼鏡を覗くのは最後の最後ってことで。

不死身の飛行機など存在しない

カッコE!

「不死身の化物など存在しない」
「血が出れば殺せる」

私の好きな言葉です。

ミスエノラ

やっぱりエノラゲイからの連想でしょうか。
ミスエノラの垂直尾翼に描かれたテールコードは矢印ですが、これはまさにエノラゲイと同一。

B-29・エノラゲイ

日本人が永遠に忘れないB-29・エノラゲイ

エノラゲイには黒帯はないですけれども。

エノラゲイは原爆投下直後にテニアンで撮られた「丸にR」のテールコードが有名ですが、あれは特殊任務機と気づかれないように偽装のために塗り替えられたもので、本来はこの「←」マークなんだそうです。

ミスエノラにはアンテナとかレーダーポッドのようなものは外装に見当たりませんが、内装なのかな。

二式複戦だ

出てましたか?出ていましたよ。
同じ二式の二式複戦「屠龍」

迎撃戦のさなか、一機の二式複戦が撃墜されます。

前述のとおり松戸の飛行第53戦隊機かと思いますが、同隊には震天制空隊などの体当たり対空特攻部隊もあったそうなので、もしかすると体当たりに失敗してしまった機体なのかもしれません。

どこに降りても日本だ!

この後の墜落を暗示する様でつらい。

佐渡中尉の最後

佐渡中尉がP-51に撃たれた後、機首が一回りして下方を向いた時に下方で「ボアッ」と爆発が起きます。

この爆発がなんなのか、昔から気になってるのですが、これは後方から射撃してきたP-51を垂直宙返りで逆襲して撃墜したシーンなのでしょうか。佐渡中尉の最後の戦果なのかな。

後方からの被弾とこの爆発シーンの間に佐渡中尉の逆襲シーンのネームがもう1ページ分くらいあったんじゃないかと気になってたまりません。

佐渡中尉の最後については「黒帯の尾部銃座に撃たれてフラフラになったところをP-51にとどめをさされた」って片山軍曹も言ってるじゃないですか。機銃に撃たれるシーンもないんですよ。

尺の都合でどこかのページが削られているような気がします。教えて編集者。

焼け死ぬ姉妹

後方で苦しんでいる人影は母親でしょうか。つらいカット。

次ページにも大勢の人が焼かれるコマ。

無敵皇軍なんていってたのはどいつだい!!

こんなことになるのに、なんで戦争をおっぱじめた。
何とか言ってみろ。

このおじさんの叫びに正面から応えないまま、この国は長い時を過ごしてきました。

Hのテールレター

4丁目に墜ちていたB-29のテイルレターはHマークです。

こういう画像を見つけました。

B-29テールコード

B-29テールコード

これによるとミスエノラはエノラゲイの同僚で509飛行団、4丁目に落ちていたのは502飛行団ということですか。

40ミリです

「これはⅡ型丙です」と佐渡は言っていますが、正しくは前述のとおり40ミリ砲装備型は「Ⅱ型乙」です。

ホ301

II型乙が翼内搭載する40ミリのホ301 。

えーっと、ポムポム砲ベースの毘式四十粍機銃とかもあるんで昔っから勘違いしていましたが、これ機関砲じゃないそうです。ロケット弾でした。えー、そうだったのー!?

口径40mmで、正確には砲弾ではなくロケット弾を射出する機関砲である。

ホ301

超強力な機関砲だと子供の頃から思ってました。そう思ってみると、道理でちゃっちい砲身だよ。Ju87Gカノンフォーゲルの37ミリ砲とか見ると、ものすごい砲身が翼下に吊下されてるじゃん。40ミリ機関砲ならあれよりでっかいはずなんですよ。

Ju87Gカノン・フォーゲル

ルーデルの飛び道具・Ju87Gカノン・フォーゲル

ホ301はロケット弾であるわけですから装弾数もたかが知れてて、装弾数各砲8発なんだって。

「二、三発でB-29もバラバラでしょう」って実際、数発しか撃てんのじゃないですかw

あー知らなかった。

しかしそう思ってよく考えてみたら、海軍の五式30ミリ機銃だって「五式」なのに、44年に40ミリ機関砲をさらっと積んでる方がおかしい気がしますよね。

うかつだったー!

飛行第四戦隊から

片山軍曹は「九州の方」といっていますが、本土空襲の頃は第4戦隊は山口県の小月飛行場にいて、北九州の八幡製鉄所防空任務で二式複戦を使った夜間迎撃戦を行っていたそうです。

飛行第4戦隊の二式複戦「屠龍」

飛行第4戦隊の二式複戦「屠龍」

飛行第4戦隊も邀撃任務でしたが、対重爆を専門にする二式複戦のインターセプタ―部隊です。防空戦のエースもたくさん。

佐渡弟が機体をもらいに行ったときにはおそらく複戦の在庫がなくて単戦を回され、それだったら小月にもどすこともないし、兄貴もいるらしいから新撰組にでもいれてやればいいや、って感じだったのでしょうか。

久我山の新型15センチ

たった2門だけ完成した、日本最大の高射砲。
2門とも久我山に設置されたそうですが、高射砲陣地は今は公園だそうです。一度行ってみたい、

久我山の五式15cm高射砲

五式15cm高射砲

陣地防衛の大口径高射砲というと、宮さんの「高射砲塔」で描かれたドイツの12.8 cm FlaK 40が有名ですが、B-17よりも高性能なB-29迎撃には12.8センチじゃあ足りないのですわ。

高度1万2千

震天制空隊の体当たり機が武装・防弾装備を取り外して、高度1万1千メートルまで上昇可能となったそうですから、通常装備のII型で高度1万2千はちょっと盛りすぎかな。

敵戦闘機だ。艦載機だぞ

はい、ここにF6Fが3機ほど出てきますが、特にストーリーにからんではきません。

我々には排気タービンがない。一撃にかけろ

国産機で排気タービン装備の機体は確かに殆どありませんでした。

でも「過給機」としてはどうだったかというと、

ハ109

  • 全長:1,575mm
  • 直径:1,263mm
  • 乾燥重量:720kg
  • 圧縮比:6.7
  • 過給:機械式1段2速
  • 燃料供給方式:キャブレター式
  • 離昇馬力
    • 1,500HP / 2,650rpm / ブースト+300mmhg
  • 公称馬力
    • 一速全開 1,440HP / 2,600rpm / ブースト+200mmhg (高度2,100m)
    • 二速全開 1,220HP / 2,600rpm / ブースト+200mmhg (高度5,200m)

ハ109

スーパーチャージャーならあったんですよ。キャブのスーパーチャージャーは調整難しそうだけどなあ。

よく国産機はみんな自然吸気だったという印象の人はいますが、栄にも寿にも、過給機くらいはついてましたんですわ。排気タービンではないけれど。この辺がのちの日本人のターボ信仰にもつながってるのかもね。マグネシウムくれくれ!

ちなみに「一撃にかけろ」は正論ですが、海軍の横空所属・大原上飛曹はB-29相手に雷電で10分間に3回接敵したらしいです。B-29の進入高度にもよるんだろうけどなあ。

降下したり上昇したり、3回攻撃する間に、八王子、東京、鹿島灘と、百数十キロも移動したわけです。その間、10数分でしょうか。

東京上空での空戦

銃座の死角である直上からの攻撃は一度しかできず、2撃目以降の後方下方や後方上方からの攻撃は命がけだったらしく。

南方から進入してきて、富士山を目印に東に進路を変えて東京を爆撃するルートだったらしいですから、待ち伏せるのは相模湖上空とかあの辺だったようです、東京の上空で待ち受けてると間に合わないめだったのでしょうか。

実際に迎撃してた人の話は興味深い。

まとめ

戦場まんがと言えば、戦場でプロの戦士たちが戦うストーリーが王道でしょうが、この「成層圏戦闘機」は帝都迎撃戦、東京大空襲という舞台を使い「戦争の中で一般市民が死に直面する場面」を描いた数少ない作品です。

味方の戦闘機が落ちてきて家族を全員殺されてしまうおじさん。
「ぎゃー」と叫び、生きながら焼かれる姉妹。
それを上空から眺めながら「ジャップを10万人くらいテンプラにしたようだ」と語るB-29搭乗員。

米軍のみが悪というわけでもない。おそらく立場が逆なら、日本人も同じことを米国でやったかもしれない。もちろん零士にも米軍に対する個人的な憎悪は消しがたくあったと思いますし、普段から民間人を誤射してビフテキ食う米兵とか書いている零士ですが、ここでは米兵に仮託してもっと普遍的な「ヒト」が持つ悪意が描かれているのじゃないかと思うのです。

エレファント回ではベルリンが焼き尽くされますが、そこでも一般人が理不尽に殺されるシーンはありませんでした。またFW190迎撃回でも、爆撃される地上の人々は描かれたことがありませんでした。戦場まんがシリーズにおいても、一般市民の理不尽な死を描いたエピソードは本当に少ないと思います。

「ミス・エノラ」はあからさまに「エノラ・ゲイ」由来ですよね。原爆投下と東京大空襲を同根の事件として取り上げようという意図を感じました。原爆だけが特別な悪意じゃない。私はそう思っています。原爆だって投下時のエノラゲイの乗員には「新しい仕組みの超強力な爆弾」という認識しかなかったのじゃないですか。原爆に焼かれて死ぬのと、焼夷弾に焼かれて死ぬの、どっちがいいって聞かれても困るんですし。

そして兄の敵を取りたいと願う少年パイロット。
戦死した敵パイロットにまで共感をする優しい心を持ちながら、それでも敵を討ち、敵を殺すことで「ほめてくれよ。にいさんにできなかったことをやったよ」と言いながら死にゆく姿。世界はなぜこんなに残酷なのだろう。

ラストシーン。
終戦直前の灰になった帝都の上空を守って、それでも邀撃に飛び立つ飛行第47戦隊の二式単戦。いったい何のために、誰のために飛んだのでしょうね。

名作でした。

次回も名作。「装備改変」と最新鋭の四式自動小銃の「バシャ」でミリオタ少年たちのコロロを撃ち抜いた「グリーンスナイパー」だー!

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