概要
初出
作中日時
関連場所
登場人物
武装SS戦車長
レヤ
レヤ上司
M4乗員
登場兵器
Me262
M4
Kar98狙撃銃
キング・タイガー(ヘンシェル砲塔)
StG44
M42型柄付き手榴弾
TM29対戦車地雷
エレファント
M36
M114 155mm榴弾砲
あらすじ
敗北直前のドイツ第三帝国。ベルリン市街戦のさなか。
上空ではMe262が最後の上空制圧を行い、P-47を撃墜する。地上のM4戦車長は「もうすこしでおしまいってのに、不運なやつだ」と墜死したパイロットに向かってつぶやく。
戦車長は後方への撤退を指示するが、レステルマイヤーは戦車との同行を断る。戦車長はStG44と2本の手榴弾をレステルマイヤーに渡し無事を祈るが、その場から離れた瞬間、地雷を踏んでキングタイガーは大破する。味方の地雷だった。
こんな廃墟に家があるはずはないといぶかるレステルマイヤーだが、レヤが案内したのは、燃料切れで放棄された突撃砲戦車エレファントだった。
レステルマイヤーはレヤに大学では物理の研究をしていること、いつかは月へロケットを飛ばすことが夢だったと語る。水を汲みに外に出たレヤだったが、米兵の集団に発見され暴行を受けそうになる。突撃銃を撃ちまくり救出するレステルマイヤー。彼に向って米兵は「おまえたちもやった、アウシュビッツ…」とつぶやいて息絶えるのだった。
砲弾がまだ残っているエレファントに、レステルマイヤーは近傍で擱座していたM4から燃料を調達する。道すがらナチスの非道について語らう二人。レステルマイヤーもアウシュビッツの事は知っている。レヤはヒロシマ、ナガサキの米軍による原爆投下、1969年のベトナム戦争など、未来に起こる米軍の非道について語る。
燃料を補給し、戦場へ戻るエレファント。レステルマイヤーはたった一人でエレファントを操作しM4を撃破する。3両のM4を破壊したところでM36が投入されるが、これも撃破。
勇戦するエレファントだがついに砲弾が尽き、最後の一発となる。レステルマイヤーはここを死処と決め、脱出も考えず米軍に向かって単騎での突撃を開始する。
過去の人間は未来の人間が失った感情を持っていた、と主張するレアだが、上司は「非合理的原始本能に過ぎない」と切り捨てる。
いろいろ
情報量、多いですねー。
第98狙撃兵連隊第13大隊第5小隊
狙撃兵連隊、なにかなあと思いましたが、当時ベルリンで戦っていたGD師団には狙撃兵連隊がかつてはあったらしいです(ベルリン市街戦時の戦闘序列にはない)。レステルマイヤーもSSぽくないので、きっと国防軍なのでしょう。
当時は自動車化された歩兵を「狙撃兵」と呼んでいたむきもありますが(ソ連の自動車化狙撃師団とかが顕著)、レステルマイヤー中尉はちゃんと照準眼鏡付きの狙撃銃を持ってるれっきとした狙撃兵ですね。
それにしても腕利きの狙撃兵でありながら、ほいほいエレファントも操縦して、しかも一人で車長と砲手と操縦手もやってM4を次々に撃破しちゃうなんて、とんでもないパーフェクトソルジャーだと思います。
ガーランド最後の上空制圧
それじゃあってんで、ガーランドがJV44の前にいたJG52はどうかと思ったんですが、こちらもこの時期はチェコとオーストリアにいたらしい。ハルトマンやバルクホルン、ギュンター・ラルとか、こちらもウルトラエースぞろいで実に惜しい。
ということでこのお話での「ガーランドの戦闘機部隊による最後のエアカバー」というのは完全な創作の様です。残念。
当時のベルリン上空で戦ってた部隊、ちょっとぐぐったくらいじゃわかりませんでした。書籍をあたる必要がありますね。
ケーニヒス・ティーガー
StG44
シュトルムゲベール。突撃銃ですね。命名は総統閣下らしいです。
のちにアメリカ他で「アサルトライフル」というのが流行しますが、あれ、きっとこのシュトルムゲベールが語源だと思います。
突撃砲・シュトルムゲシュッツもアメリカでは同種車両が「アサルトガン」と命名されたらしいですから、やっぱ米軍もドイツ軍リスペクトというかドイツ軍カッケーのりはあったんだと思います。
なんでエレファントいるの?
ぐぐってみましたら、こんな事実が!
まじでベルリンにいたのエレファント?なんでそんなこと知ってるの零士!?
たった4両の稼働エレファント、このうちの一両がレヤがおうちにしていた車両なんですね。そうかー。実話かー。
「幽霊軍団」のエレファントは第614重戦車駆逐中隊所属。
覚えておいてください。
スペック
よし聞け。これがエレファント出撃時に語られるスペックだ。
突撃砲戦車エレファント
砲身長71口径
PaK43/2L71
88ミリ対戦車砲を装備し、その全備重量実に68トン。
マイバッハHL12TR
水冷12気筒370速力ガソリンエンジン2基を搭載し、前面装用200ミリ
いかなる連合軍戦車も一撃で撃滅しうる重戦車…
まさに無敵であった…
零士はたまにこういうスペック紹介してくれるじゃないですか。
今じゃあエレファントなんてその辺の小学生もみんな知ってるけれど、当時は読者が誰も知らないマニアック兵器だったんだよ。その無知なる読者にエレファントのすごさを端的に伝えるこの一コマ。
最高だよ、零士!
重装甲を誇るエレファントも、上面の装甲はわずか30㎜
「上からくる弾丸にゃ弱いぞ」って四式中戦車の土方大佐もいってましたね。
全然関係ないけど
なんておもろかしい。
宮さんなんてきっと大喜びだわ。
宮さんっていえばさー
エレファントというと、後に宮さんの「雑想ノート」のなかの「豚の虎」で描かれた、P虎ことポルシェティーガーがまだ採用されてもないのに、気早く先行量産しちゃった90両分が突撃砲として改装されてエレファントになる経緯が「虎へんじて象となる」として描かれたのが有名ですね。
だからこのエレファントもP虎と同じく電動戦車なんだよ(エンジンは換装されてるらしい)。さすがに戦場まんがの頃はそこまでの情報も流通してなかったみたいで、そういった「実はハイブリッド車」っていう部分への言及はない。
やっぱり時代ってものですよね。
つよつよ
とにかく強いんですよ。対戦車戦闘ならどんなのにも負けない。
11月5日、第653重戦車駆逐大隊の戦果報告は、敵戦車582輌、対戦車砲344門、火砲133門、対戦車銃103丁、航空機3機、装甲偵察車3輌、突撃砲3輌に達した。さらに11月25日、2輌のフェルディナントは54輌の敵戦車を撃破した。11月29日の時点で、各車の走行距離は2,000kmを記録し、同隊はオーバーホールのため西方のザンクト・ペルテンへ撤退を命じられた。
つよすぐる。
こんなのが見渡す限りに出てきたら、そらM4だってパニックになりますよね。
エレファント動画
いろいろと当たっていた最中、エレファントのレストア動画なんてすごいものが公開されているのを発見してしまいました。
ななめ前方から見たショットは、まるっきりレステルマイヤーの進撃シーンです。
刮目してみよ。
M114 155mm榴弾砲
無敵のエレファントを撃破する重砲部隊。零士まんがには米軍の物量の象徴としてよく出てきますね。重砲隊。
米軍にもいろんな野砲があるけれども、零士がよく描くのは見たかんじ、M114 155㎜榴弾砲っぽいですね。車輪と制退機の雰囲気で。
零士絵だと砲身長もすごく長くてカノン砲っぽい感じですが、仰角をあれだけかけてるのはやっぱり榴弾砲でしょう。
零士は「重砲」って表現好きだよね。「重砲隊」とか支援のシーンでよく出てくる。実際は「重砲」なんて砲はなくて(帝国陸軍には「野戦重砲」というジャンルはあった)、直射するカノン砲だったり、曲射弾道の榴弾砲だったり、ようするに「でっかい砲」を「重砲」と呼んでいるのだろう。
こんなのをずらっと並べて米軍の物量を表現するのが零士流。
しかもものすごく密に並べるんだよ。砲撃とか空襲受けたらひとたまりもないはずだけど、かっこいいからいいのだ。
やっぱり本物はあまり近接して配置はしていないですよねw
フォン・ブラウン博士はやるかもしれない
この後もたびたび出てくる宇宙への憧憬。やりますとも。フォン・ブラウン博士。
これもタグ打っとくぞ。
あとでタグを一覧するのが楽しみです。
レヤ上司
最後はSFっぽく締めて終わる作品ですが、レヤの思い入れを全然相手にしないレヤ上司もいい。零士ものにありがちなクールというか、スレた「大人」ですよね。
ああいう人がたびたび出てくるのは、自分が思い入れに支配されないための自戒というか、自己批判のための零士的なリミッターなのかもしれないとおもったりします。
まとめ
冒頭に出てくるティーガーII、かっこいいなあ。「キング・タイガー」という表記ですが。88㎜L71の主砲(これはエレファントと同じ装備)本物より長く描いてある気がします。レステルマイヤーのKar98ごしにみたティーガーIIの砲塔のカット、ちょうしびれる!しかも味方の地雷踏んでやられちゃうじゃないですか。たまに出てくるモチーフですけど、最強無敵だけど味方装備の誤射、誤爆でやられちゃうっていう描写も趣深いですよね。
エレファント、今回たくさん情報を見返しましたが、私はこの「幽霊軍団」で知ったんですよ。兵器大好き少年でしたからタイガー戦車、パンサー戦車、ロンメル戦車(笑)なんかは知っていましたが、「エレファント」なんてツウなものを日本人に知らしめたのは、まずは松本零士だと思うのです。
「アフリカの鉄十字」「成層圏になくセミ」とこの「幽霊軍団」の三作は発表時期もかなり前ですし、掲載誌も青年誌ということで、後に続く戦場まんがとは絵柄もテイストも少し違います。パイロット作品ではあったのかもしれません。その分史実の考証には力が入っている作品だと思います。
むかしはその辺がサンデーっぽくないので(笑)あまり好きではなかった三作ですが、今読み返してみると考察がめっちゃすごい。エル・アラメインにしてもベルリン市街戦にしても、昭和の情報でよくこれだけの作品を描いたな、と感心します。
はい、次回はみんな大好き「パイロットハンター」です。
正座して嫁!
Read Leiji now!
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